「英語の資格を持っていると就職や転職に有利」
そんな意見を見かけることがあります。それって本当でしょうか?そもそも有利か不利かを理由に英語を学ぶ・学ばないって選択はアリなのでしょうか?私は海外営業として20年以上働いて来て多くの人と仕事したり、採用に関わったりしてきました。英語の資格が就職や転職に有利って本当なのでしょうか?また、有利か不利かだけで英語を捉えることってどうなのでしょうか?少し考えてみます。
業務上英語が必須のポジションの求人の場合
業務上英語が必須の場合、英語が出来る事は必須条件です。
こんな場合には英語の資格は非常にアピールポイントとなります。実際に選考時には英語力の目安としてTOEICや英検を考慮に入れることはあります。ただし、あくまで考慮に入れるだけです。
TOEICのスコアが高いからと言って必ずしも英語を使いこなせているとは限らない、と言うことには注意が必要です。英語力を競う事が仕事ではありませんので、「仕事が出来るか?」と言う事が一番重要なポイントになります。
例えば、仕事なりプライベートなりでほとんど英語を使った経験のないTOEIC 900点の人と、今まで仕事で英語を使っていたり、海外旅行に行ったりしてきたTOEIC 700点の人がいた場合、自分だったら後者を選びたくなります。
語学力って、どれだけ場数を踏んだかです。練習しているだけより、何度も試合を経験した方が身に付くものも大きいです。「この人は仕事をしっかりこなしてくれるか?」と考えた場合、やっぱり多くの場数を踏んだ人を選びたくなります。
条件として英語の資格を設定している場合
採用条件として「TOEIC XXX点以上」とある場合や、入社後の昇格・昇進試験で特定のTOEICスコアが必要になる場合などは英語の資格を持っていると有利ではないでしょうか。
ただし、これは私の個人的意見なのですが、このような条件付けが妥当なのか、はなはだ疑問です。
「業務上どうしてもある程度の英語力が必要」とか「将来的に海外赴任や出張の可能性があるため英語力のある人材を確保したい」、と言った場合であればわからなくもないです。
ですが、業務上ほぼ英語を使う機会がないにも関わらずこう言った条件設定がされている場合、それって昔のセンター試験の足切りと同じじゃないでしょうか?もしそうだとしたら、英語が受験勉強の延長になってしまい「使える」英語の出来る人は出てこないと思うのです。 私が以前働いていた会社でも、ある時期から昇進条件にTOEICのスコアを取り入れたことがありました。見ていて可哀そうに思えたのが国内営業一筋のベテラン営業さん。業務上、海外との接点は無いし英語を使う機会もありません。ですが、TOEICのスコアが取れないと昇進出来ないのです。
課長になってもおかしくない方だったのですが、TOEICのスコアが足りないと言うだけで主任止まりでした。本人は「オレは英語ができないから万年主任だ!英語使う機会なんてないけどな!」と開き直っていましたが、本心はどうだったのでしょうか。
英語の資格アピールの注意点
英語力をアピールして採用となった場合、当然ですが早かれ遅かれ英語が必要な部署に配属されます。
ここで一つ、注意して欲しいことがあります。
「あなたは本当に英語を使って仕事をする覚悟がありますか?」
仕事って、そもそも大変です。その大変な仕事を英語で外国の人相手にするんですよ?「何となくカッコ良さそうだから」「入社時にTOEICのスコアが条件だったから」。そんなモチベーションで続くとは思えないんですよ。
「世界を相手に勝負してやる!」
このくらいの意気込みが欲しいですよね、英語力をアピールするなら。そう言うガッツのある人と一緒に働くと楽しいものです。
実際にはそんなに力む必要はないですが、英語を使わなくていい仕事の倍は大変だと言うことは頭に入れておいた方が良いと思います。
英語で仕事をすると言うこと
「英語の資格を持っていると就職・転職に有利」という意見について、個人的にはそんなことはどうでもいいです。資格試験の結果に一喜一憂している場合ではないのです、実際に仕事となると。それ以前に「英語で仕事をしたいかどうか」と言う自分の気持ちの方が重要だと思います。
英語で仕事をすることは大変です。経験の無い人には想像できないと思いますし、当然だと思います。
でも逆を言えば、すごくやりがいや達成感のあることです。英語が出来れば世界中の人とコミュニケーションが取れます。思ってもいなかったような反応をされて、それにどう対応しようかと悩むこともまた楽しいものです。そんな事を繰り返しているうちに、人としての幅と言うか深さと言うか、成長が感じられることもあります。
「自分の世界が広がる」感覚とでも言うのでしょうか。こんな経験が出来ることが、英語で仕事をする素晴らしさだと思うのです。