前回値上げ案内のメールを紹介しましたが、今回は forecast (需要予測) を依頼するメールを紹介します。
製造業にいると当たり前の感覚なのですが、馴染みのない方も多いと思いますのでまずは forecast (需要予測) について簡単に説明します。
すごくざっくり言うと、一つのモノが出来る流れはこうなります。
原材料調達→一次加工→二次加工(部品)→部品調達→製品組立・検査→出荷
この一連の流れは Supply Chain と呼ばれます。例えば車を作ろうと思ったら鉄鉱石を掘るところから始まるわけですね。もちろん全てを自社でする必要はありません。
これだけ長い工程があると、明日欲しいと言ってもモノが入って来る訳はないですし、急に増やして欲しいと言われても出来ないわけです。
そこで forecast (需要予測) の出番です。一定の期間(1年とか3カ月とか)について、事前に「このくらいの数量が必要だよ」と言う情報を共有しておくことで、サプライチェーンをスムーズに回すことが出来るのです。
さて、前置きが長くなりましたが forecast 依頼メールの例文を解説します。
目次
Forecast 依頼の背景
今回なぜ forecast を依頼したかと言うと、原材料の価格高騰を受けて供給が不安定になっているので、通常より納期が長くかかってしまうと言う事が起き始めています。
買い手・売り手ともに欲しい時にモノが手に入らないと business chance を逃してしまいます。中長期で見通しを立て、安定した供給体制を作る事で供給不安をなくそうと言う目的です。
そんなこんなで、お客さんに forecast を依頼するメールを書きました。更に前置きが長くなりましたが、例文を見てみましょう。
Request for forecast
Dear Sirs/Madams,
We hope everything goes well with you, your family, and your team.
Today, we have a request for your long-term forecast. The reason of the request is to share the forecast with our suppliers in order to keep on-time delivery. Of course we do not disclose your company information to our suppliers.
The background of this request is related to price increase which we advised before. Due to various raw material cost increase, some suppliers make “priority shipment” to the customers with higher price, which makes our supply chain unstable. Our purpose is to make the supply chain stable to prepare in advance by sharing the long term forecast.
We expect the long-term forecast as ;
- 6 to 12 months, model by model
- No liability, information only
- Rough estimation acceptable
We assume delivery schedule will be more unstable under current situation. Thus, we would like to be proactive. If you share your long-term forecast, we will offer allocation priority for you.
Thank you for your understanding and cooperation in advance.
Best regards,
Kuniwo
The reason of ~
まずは今回 forecast を依頼する理由を説明しました。
実際のところ、我々が調達している部品、鉄やアルミ製品が多いのですが、従来より1ヶ月くらい納期が長くなっています。今後どうなるかもわかりません。ですので、安定供給のために forecast を欲しいと依頼しました。
Of course ~
この部分は以前あるお客さんに、客先情報を supplier に開示するなと注意されたことがあるので、そんなことはしないので安心してね、と言う意味合いで追加しました。
disclose : 開示する、公開する
秘密保持契約のことを NDA と言いますが、"Non-Disclosure Agreement" の略で、上記 disclose の派生語です。
The background ~
なぜ forecast が必要なのか、その背景を説明しました。
これは実際に supplier さんから聞いた話なのですが、高く買ってくれるところ優先で割り振っているので入手が困難になっているものがある、と言うエピソードを入れました。
Our purpose is ~
ちょっとくどいかな、とは思いましたが、改めて安定供給のために forecast が欲しいと言うことを説明しました。
6 months to 12 months, model by model
No liability, information only
欲しい forecast の内容をリストアップしました。model by model はモデルごとにとの意味です。
No liability, information only
liability は「引き取り責任」と言った意味で使われますが、今回はただの情報ベースで引き取り責任はありませんよ、と言う意味です。
Rough estimation acceptable
そもそもそんな先の事は預言者じゃないのでわかりません。ですのでざっくりした予測でもOKですよ、と説明しました。
We assume ~
このままだと納期がどうなるかわからいよ、とちょっとした warning を入れました。「forecast 出しておいた方がいいな」とお客さんに思ってもらうためです。
Thus, ~
ここまでで説明しているのに敢えてこの分を入れた理由は、成り行きで納期管理するだけじゃなくて、積極的に対策を取って頑張りますよ、とのアピールです。
proactive : 先を見越した、前向きな
forecast 出してくれたら納期は優遇するよ、とお客さんのメリットを一言付け加えました。とは言え、限度がありますので実際に優遇出来るかどうかはわかりません。
こちらからのお願いばかりじゃなくて、お客さんのメリットも説明しておいた方がいいかな、と思って追加しました。
Thank you for ~
お願いごとをした場合の締めでよく使われる表現です。汎用背が高いので覚えておくと便利です。
何かを依頼する時は相手のメリットも考えよう
こちらの要求だけを力説しても相手にされません。相手にとってどんなメリットがあるのかも合わせて説明しましょう。
今回の場合だと、製品の安定供給と言う事が一番のメリットなのですが、更に forecast をもらえれば優先的に対応します、と言う事も提示しました。本当に出来るかどうかはわかりませんが、まあそこは暗黙の了解です。
価格・納期が厳しい状況はまだしばらく続きそうですが、何とか耐えて乗り切りましょう!